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好きなものものを紹介していく

世界一好きな漫画

 

わたしの中で完全にバイブルと化している漫画。

 

とりあえず、ブログかなんかを書こうと思ったときにはじめに紹介する漫画はこれと決めていた。この漫画はもう、友達に勧めるのもやめた。もし好きな友達に気に入ってもらえなかったら悲しくなってしまうかもしれないから。家で保管している初版のものと、人に貸す用、サイン入り、全部で三冊持っている。変態か。

だって、この漫画を超えてくる漫画にきっとこの先そうそう出会えない。

確かに大衆ウケはしづらそうな感じはするけれど、ある一定層には深く響く漫画だと思う。本当に大切な一冊。

 

町田洋さんの、『惑星9の休日』。

 

惑星9の休日

惑星9の休日

 

 

 

 

この漫画と出会ったのは、忘れもしない3年前の夏休み、御茶ノ水丸善でぶらぶら漫画コーナーを歩いていたら、そのどストライクの表紙とタイトルにビビっときてしまい、あらすじも確かめないまま良い漫画だと確信を持って即座にレジへ。

家に帰って、机をきれいに片付けて、椅子に座って、背筋をのばして読んだ。

想像の斜め上超えてよかった。感動して泣きすぎて大変だった。

とりあえずこの漫画がこの世に存在していることに感謝した。なんなら日本語圏に生まれ、この漫画に出会えるほど本屋が身近な地域に住めてよかったと思った。

というかここまで自分の趣味というか好きなものをつめこんでくれる漫画家がいたのか、という感じだった。作者の町田洋、という中性的な名前から男女は判別しにくい(あえてそうしたんだと思う)。そしてわたしの勘が正しければ、結構若い方が書いたんじゃないかなあ、いや、全部勘です。

 

しかもその感動をおさえきれないまま本人のウェブサイトに記載してあったメールアドレスにファンレターを送ってしまった。ファンレターなんて後にも先にもそうそう書かないよ。やばすぎる。以来、新作が出るたびにファンレターを送っている。ちなみにその全部のメールに対してとてもすてきなイラストをお返事として描いてくださっている。読んでくれているんだなぁ。

 

いったいどんな内容なのかと言いますと。

この漫画は8つの物語をあつめたオムニバス形式になっていて、どれも惑星9という常夏の惑星での穏やかな日常を描いたもの。映画フィルムの倉庫会社で働くおじさん、夢をかなえるため故郷である惑星9を捨てた女優さん、若い頃宇宙飛行士だったおじさん、など登場人物は様々。出てくるおじさんたちがみんなかわいい。

作画が独特で、至極シンプルで直線的。だからこそ入道雲が生き生きとして見える。

 

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いやー、なんかアフリカとか行きたくなっちゃう。ボリビアとか。アメリカでもいい。どこか広大で何もない土地に。

白黒なのに、色鮮やかに伝わってくる何かがある。なんだろう。もう言葉が追いついてこない。ただひたすら、心の底から求めていた静かな情景がばんばん描かれてくる感じ。

ばんっと1ページまるまる使って一枚の絵のように描かれるシーンが何度かあるのだけど、そこでなんというか時が止まる。例えばドライブしていてふいに目の前に海が見えて、「うわぁきれい……」と一瞬心がからっぽになってしまうような。主客未分状態というか。そんな感じになる。静謐な夜の描写がとてもうまい。砂漠の夜。遠くまばらに光るネオン。街灯の灯り。

絵のような美しい描写で何度か泣きそうになり、むかし宇宙飛行士だったおじさんの話で泣き、そこからもちょくちょく泣き、最後の物語の、いちばん最後のページで再び大泣き。いや泣きすぎた。本来、そこまで感動ものでもないはず、けれど心がほっとする漫画。

 

第一話まるごと公開されています。

惑星9の休日

 

この漫画の感じが好きな人は、他のイラストレーターで言うと市川春子さん、たむらしげるさん、コマツシンヤさんあたりも好きかも。

町田洋さんはこれ以外にももう一冊、『夜とコンクリート』という単行本を出していて、あとはモーニング・ツーに読み切り『日食ステレオサウンド』を載せていたけど最近は町田洋さん、新作を出していない。

 

いつかふらっと漫画を出してくれたら嬉しいなぁ。何十年だって待つ。そしてまたファンレターで、素敵な漫画を届けてくれてありがとうと言いたい。